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日々雑感

幸せは日々の、雫のような時のなかにある。
毎月、つれづれなるままに・・・
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Mさんの結婚式
 

日々雑感       渡辺範子

 花嫁と花婿のぴったり気持ちの寄り添ったダンス、17世紀に建てられた立派な教会の息をのむ美しさ、参列した人々一人一人に喜びの光が差し込む。

スペインの太陽はことのほか明るく、燦燦と輝くのだ。

 今日の主人公は日本人の母とフランス人の父を持ったM子さんとスペイン国籍の花婿Rさん。まさに国を越え民族を越えた素晴らしい結婚式だ。
私にとっては今も変わらず愛らしく賢く優しいMちゃん。

Mちゃんが小さかった頃、私たちはこの一家に本当にお世話になったのだ。そして若き日、日本から辞書を詰め込んだトランクを持ち単身海を渡ったMちゃんのお母さんの生き方と子育てぶりに感動した。

車椅子の息子の願い「世界を見てみたい」を実現するために、例によって、軽やかに気持ちを弾ませ、ライン川を下りたいねえ、沢山の絵を見たいねえ、音楽も聴きたいし、「母子で行こう」などと無謀な思いつきが最初だった。

その無謀な思いつきは息子の高校時代の弁論を聴いての親ばかだったかもしれない。確か入賞した中から二人が外国へホームステイをさせていただけると言うので息子はおおいに燃えた。入賞の後、車椅子だってできるんだ。したいんだと審査官に訴えたがホームステイの願いは適わなかった。息子は弁論で平和は身近な愛から、飢えている子どもたちがこの地球の上にいる命を落している、世界を見つめようと語りかけたのだ。

世界へ、そんな願いを語った息子に母は胸がきゅんと痛んだ。

それから月日が流れ息子は大学2年生になった。不自由さは増したが、お陰で私たち家族は息子を核に結びついた。娘は大学からの帰りに買い物をして夕飯をつくる、弟の最大の理解者になっていた。そんな時この一家と出会った。私の恩師の娘さん、そのご主人はフルーティストだ。彼の音楽は一度聴くと虜になる。虜になった私たち家族は「音の語らい」という息子のために主宰する音楽会へJ.M.Tanguy氏を招きたいと思った。ベルギー国立オーケストラの主席奏者だった彼が笑顔で息子と握手を交わしてくださりご縁ができた。一年後願いは叶い「音の語らい」第3回を開催した。音楽会の後外国へ行ってみたいと息子がお話したら「是非に」と言ってくださり夢のような初旅行が5ヵ月後に実現したのだ。夫も休暇をとり娘も就職活動期を休み、私たち家族は息子とともにベルギーへ発った。当時、ご一家はベルギーに住み夏の休暇のほとんどを裂いて私たちと過ごしてくださった。Mちゃんは当時7才,フランス人学校と日本人学校へ通っていた。移動はJ.M..Tanguy氏運転のメルセデス。車椅子を折りたたみ積んで、到着すると車椅子を広げ息子を乗せ安定を見計らって出発というような移動の仕方で、Mちゃんがそのうち手伝って部品を持ったり息子の車椅子を押したりしてすっかり年の離れた兄妹のように打ち解けた。

Mちゃんの「ごっこ遊び」が可愛くてよく付き合い息子は楽しそうに笑った。

旅の間「剛はプレジデントだよ」とまったく気を使わないように心配りをしてくださり、なにしろ食べることが好きな私たちは七人打ちそろって本当に良く食べた。よく笑った。美術館へ、音楽会へ、ご一緒し一年後,音の語らいで招くことになる五重奏団との出会いもあった。

さて子どものMちゃんは8時になると必ずベッドに入らなくてはならない、お母さんが傍で毎日、本を読んだり話をしながら愛しているのよ大好きなのよと頬を寄せているのがおやすみ前の行事だった。このお母さんの信念は3歳までは絶対泣かさない。泣いたら直ぐに抱いてやる。ということで、私はおおいに共鳴した。この旅の間、夏の宿題をきちんとするという約束を守るため、私たちのホテルへ迎えに来てくれる時は、朝の勉強は済ませていたのだった。後は車の中もお喋りがいっぱい時々今ねえフランス語の発音でママとパパが言い合ってるんだよと通訳してくれた。車の中が定員いっぱいになるので「Mちゃん人形になって」と冗談を言うと本当に車の後ろで人形のように可愛く動かなくなって大笑いした。この夏が忘れられず2年後の夏をまたこの一家とすごした。それは息子にとっては最後のヨーロッパ旅行になった。

 目の前にいるプリンセスのようなM子さん、なんと立派に育ったことだろう。

今はイギリスの大学に招かれ研究の日々、環境がテーマだ。お似合いのRさんと共に幸せな人生を紡いでいってほしいと心から願った。息子の風が吹いた。「congratulations!」息子の声が聞こえたような気がした。笑顔が浮かんだ。

| - | 01:13 | - | - | pookmark |