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日々雑感

幸せは日々の、雫のような時のなかにある。
毎月、つれづれなるままに・・・
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墓参
 

日々雑感           渡辺範子

  朝、出勤すると机の上に白い花、蛍袋だ。

「あっ 風が光った」心の中で声がした。

息子の命日はこの季節だ。

蛍袋、山の空気をたっぷり吸った素朴で優しい花でいつも

命日が近づく頃に咲き始めるのだ。

蛍袋を摘んでそっと花瓶に挿してくれた人の心遣いがうれしい。

  日曜日、同級生たちが集まって 息子の墓参りにいきたいと

連絡があった。一緒に熱中したグリークラブのメンバーで神坂さん、河合さん、上東さん,花倉さん、田辺さんたち。

大学へ入学し男性合唱団に入った息子の車椅子を押してくれた仲間たちだ。今ではそれぞれに家庭を持ちよきお父さんだ。

お墓の前で急遽私たちのリクエストにこたえて 

あのころ歌ったクラブソングを歌ってくれた。指揮は花倉さん、なつかしいハーモニーだ。

すばらしい時間になった。緑に包まれた霊園の一角

「あっ 風がひかった」   

一瞬に時間は縮まり 懐かしい若者たちのあの頃が浮かんできた。

北原白秋の「柳川」、八木重吉の「雨」合唱組曲になっていた

これらの詩人の歌を練習する声が思い出される。

「もうしもうし柳川じゃあ、柳川じゃあ」[御者は喇叭の手を止めて][雨が降っているようだ]あのフレーズが口をついてでてくる。

偶然一緒になった私の妹夫婦も混じって、お昼は山の上のレストランにした。

白い紫陽花がいっせいにふくらみ始めて、うす曇の山肌を覆っている。細い山道を3台の車が続いた。

  田辺さんは福井から河合さんは広島から息子に会いにきてくれた。思い出話に花が咲いた。

田辺さんの下宿での焼肉パーティは中でも圧巻で、

「なべちゃん(息子剛のこと)をみんなで担ぎ上げて 

車椅子も担いで上がり 教室から持ち出した机をなべちゃん用テーブルにして、ホットプレートにスイッチ入れたとたんブレーカーがとんで」なんどか聞いた話なのにもう大笑いで楽しくてたまらない。

細い下宿の階段、一部屋を大勢の男たちが占領し おおいに笑い歌い飲んで、ひとつのホットプレートで食べて 想像しただけでも吹き出してしまう。大きな身体の田辺さんが小さくなって、翌日ご近所に謝り歩いたのだそうで、みんなで涙がでるほど笑った。

仲間の中で笑っている剛が浮かぶ。

ほんとうによかったね。

リーダー神坂さんはグループの中で一番に結婚した。亡き剛の代わりに媒酌人をしてほしいと言われたときは驚いた。それから上東さん、田辺さん、花倉さんと続けて私たち夫婦は媒酌人をさせていただいた。

息子の介護で夫がグリークラブの合宿や遠征に付き添っていったりした思い出を語った。

剛がいたからこそあの時間を共有できたのだ。

「会社の同僚にこんな仲間がいてともに歌えることがうらやましいといわれたというのは上東さん。「もっと大学時代に君たちのように何かに夢中になればよかった」といわれたそうだ。

熱中したあの頃を思う彼らの眼は今もきらきらしている。 

 「ぼくね、ほんとうは仕事で、来られなかったんです。間際になって勤務変更があって、来られたんです。剛さんやってくれたなあと思ったんですよ」と花倉さん。彼はホテルマンだ。

剛のお陰でこうして20年ぶりで会えてその時間が一気に縮まったと一人一人が嬉しそうに語る。

私たち夫婦は何よりの息子の記念日を過ごさせてもらった。

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